ムシカ・ポエティカ

西澤誠治 Seiji Nishizawa


西澤 誠治 Seiji NishizawaSeiji Nishizawa
西澤誠治

Contrabass / Violone
コントラバス / ヴィオローネ


 東京藝術大学音楽学部卒業、同大学院修了。コントラバスを林雄一、故江口朝彦の各氏に、室内楽を巌本真理弦楽四重奏団に師事。東京シティ・フィル首席奏者を経て、現在、読売日本交響楽団団員。オリジナル楽器にも造詣が深く、ヴィオローネ奏者としてバッハ・コレギウム・ジャパン、オーケストラ・リベラ・クラシカ、東京バッハ・モーツアルトオーケストラなど日本の主な古楽アンサンブル、オーケストラに参加している。


<老マエストロ>

 僕の所属するY響の常任指揮者に80才を越えたミスターS氏が来春から就任することになった。世間的にはいわゆる老巨匠と呼ばれる御大だが、どっこいその精神は皆の期待するところの枯淡の境地などとは違い、たいへん瑞々しいものである。先頃、Y響を振ったベト1もまるでピリオド楽器でやるような超過激快速テンポであった。しかしこのアプローチを彼が10年前にやっていたとは僕には思えず、考えるに彼は自分が古くさい人間だと思われるのが死ぬほど嫌いなはずで、きっと常にスコアを見直しているに違いないのだ。彼は若い頃から自分で作曲もし、バリバリの現代音楽のスペシャリストであった。歴戦の勇士なのである。常に戦っているのだ。やはり求道者は今を生き、枯れることのないわき上がるパワーで密林を切り開いていくエクスプローラーでもあるのだ。
 さて我らが淡野先生はもちろんまだまだ老巨匠というお年ではないが、やはり同じく求道者のパワーで我々を引っ張っていってくれる強力な牽引車である。いつも様々なインスピレーション溢れる啓示を我々に示し、それがどれほど僕個人の音楽観をも豊かなものにしてくれたことか。たいへん感謝している。この場を借りて御礼申し上げたい。